よく言うじゃないですか。
「有名になってほしくないお店」とか
「隠れ家」とか。
正直あれって、お店がそう言ってるだけでしょって思ってたんです。
そうやって斜に構えて、斜めに足を組んで立ってたんです。
へー、スゴイネー
ってね。
撤回します。
ここは本当に人に知ってほしくないお店でした。
もちろん、いい意味で。
いやいやあんた、こんなとこに書いちゃってんじゃん。
とかね。言いたいのはわかります。
そういう年頃ですよね。
でも、行くならちゃんと行ってほしい、ということです。
ということを書いていくんですって。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は人に知ってほしくない酒屋さん、「一力商店」さんに来ました。
平戸、一里塚、権太坂を越えて、境木商店街も行き詰まるくらい奥。
左側にある、
見た感じはごくごくフツーの酒屋さん。
店先にグリーン多めの植木が並べられています。
ワインの産地、ヨーロッパの庭園をイメージしていることは、言うまでもありません。
一歩店内に足を踏み入れると…
わーっとワインが並んでいます。
さて、ここでひとつ問題が。
私、あまり酒屋に行ったことがありません。
「ねえ、ママ、お酒はスーパーにしか売ってないんじゃないの?」とか言っちゃう始末(言いませんが)。
なので、この店内を見ても、「わーっとワインが並んでいます」という小学生みたいな感想しか持てません。
で、いったいどこがすごいんでしょうか?
店主の原さん!(店主)
はい、こちら店主の原さんです。
原さん
そもそも、僕はお酒が飲めなかったんだよ。
酒屋なのに!なんでやねん(ビシッ)
酒屋なのにお酒が飲めなかった原さん
そう、それで、酒屋は45年くらい前からやってるんだけど、30年ほど前に、ある1本のワインとの出会いで、私の人生が変わったんだ。
一口で言えば、それは「添加物が入っていないワイン」だった。
ワインで人生が変わった原さん
つまり、私が飲めなかったのは添加物が入ったお酒だったんだよ。
それはものすごい衝撃でね。それからもうたくさん専門書を読んだり、いろんなワインを飲んだり。
商売にすることなんて考えずに調べまくってたね(笑)
結局、そんなに詳しくワインについて教えてくれるところがほとんどないんだよ。
添加物、料理、それとの飲み合わせ、知れば知るほどワインを飲むことが楽しくなる。
カギは添加物が入っていないワイン
原さんによると、添加物が入ってないワインは、悪い酔い方もしないそう。
二日酔いなんかはすべてワインに入っている添加物が起こしているらしい。
そもそもワインに入っているものは、自然のものが100%であるべきだ、と言う原さん。
原さんが若々しいのもワインのお陰だとか・・・
ところで、
おいくつなんですか?
原さん
74歳だよ。
え、すごい、見えなぁい・・・若いよ、原さん
試飲の度に香りをかぎ、味わい。そういったことを何千回と繰り返した原さん。
自然そのもののワインは、体から酔わすのではなく、気持ちを心地よくしてくれるそうだ。
もともと、ビールを運んだりすることがメインで、その他のお酒はあまり扱わなかったとか。
私たちがよく知ってるところで言うと、「ミカワヤでーす!」のさぶちゃんみたいなもんだ。
「ミカワヤでーす」のさぶちゃんからワイン博士になった原さん
正直、配達だけでも大変なのによくやってたよ。
今も変わらないんだけど、それは「儲けたいから」やったんじゃなくて、もっとこの自分の感動を他の人にも知ってほしいという想い、それだけだったね。
ここへ来るお客さんは常連さんか、その常連さんからの紹介の方がほとんど。
そして、初めて来た人は大体が常連さんになるとか。
さらに、広がりはすべて口コミ。
今では全国にお客さんがいるというからすごい。
そこまで人を引き止めるのは、すべて原さんのそのとんでもない人柄にある。
とんでもない人柄、それは・・・ところでさっきから気になってたんですけど、
この絵はなんですか?
原さん
これは、お客さんの紹介で来た芸術家がいて、僕が話してるとなにか書いてるからメモでもしてるのかな?って思ってたら、おもむろにくれたんだよ。
僕の顔と、ワイングラスなんだって。
ほほほう(嘆息)、これはなかなか、なかなかですね。
聞くと多くのお客さんは、ここをただの酒屋ではなく、憩いの場所だったりホームだと思って通ってるそうで。
気軽に、「こんにちは!」と立ち寄る人もいれば、結婚の報告をしにくる人もいたり。もう実家みたいなもんですね。
原さんからしたら、口コミで親戚が増えていく感じです。
ところで、話しを聞いてたら私もワインがほしくなってきましたよ。
なんか、いいのあります?(すごいざっくりした質問)
ワインにはすべて原さん直筆の紹介が独自の視点で的確に書いてある。
これが楽しみでいろんなワインを買っていく人もいるんだとか。
っていうか、棚に並んでるワイン、どれも安い。
いいワインとかいうから結構気合い入れてきたけど、お手頃。
大体が1000円前後です。
その場で一回転する私を尻目に、原さんは…
なんか冷蔵庫開けとる!
これは…
試飲の予感!
※「試飲の予感」とは、取材する者が「折角お酒の取材なんだから、なんか飲みたいなー」と常々思っていることが実現しそうなその直前に感じる予感のことである。
もうこうなったら取材者は犬のように舌を出して尻尾をふって待つしかないのである。
「ハッハッハ、早く早く」
原さん
今日はどうやって来たの?
「徒歩です」(食い気味)
原さん
じゃあ、これ飲んでみなよ。
1ヶ月前に開けたやつだけど。
もちろんですとも。
ん。
これは…
美味しい〜、それ以外なにもない〜
(ワインの味のボキャブラリーがないのでは決してなく、実際に飲んでみないとわからないよ、ということです)
しかも、開けて時間が立っているにも関わらず、シュワシュワがすごい!
炭酸が生きてる!
ん?そんなこと言っている間に、原さんがまたなにか出してる。
はて?酢漬け?
ワインに酢漬け?
こちらは原さんお手製の無添加ショウガの酢漬け。
「酢」もこだわり、添加物を使用していないものを使っている。
原さん
ワインを美味しく飲むには料理も重要。
ワインが料理を美味しくするのと一緒で、料理もワインを美味しくするんだよ。
これを食べながらワインを飲んでみなよ。
「ワインを料理に合わせる」という頭はありましたが、
ここでは「料理をワインに合わせる」そういうことも教えてくれます。
もう、とにかく添加物を一切使っていない酢漬けを、今度は赤ワインといただきます。
咀嚼しながら、ワインを口に含む。
え?甘ぁい
あまあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!
・・・
コホン…
はい、ええ、さて、なんでしたっけ。
そう、そのこだわり故に、一力さんでは酢はもちろん、醤油、みりん、など、ワインに合わせてほしい調味料なんかも扱ってます。
初めはお酒を買いにきていたお客さんも、この調味料目当てになっている方もちらほらいるとか。
原さん
ごそごそ・・・
おやおやぁ
そんなことを画面の前のみなさんに説明している間に、
またなにかでてきましたよー?
原さん
これ、とっておきだから。
はい、でました。
”とっておき”
もう黙ってたら家宝とか持って帰れそうな勢いです。
なんと、一力さんで扱う唯一の焼酎の蔵元。
この蔵元さんと一力さんが作り上げた、「特別な芋焼酎」だそうです。
チビリ
スワっー!!
(「スワっー」とは・・・口の中にこれまで体験したことのない、爽やかな香りが広がったときの音)
すごいですね、こんな爽やかな風味の芋焼酎は飲んだことないです。
原さん
ここは小さい蔵だからあんまり多くは出回らないんだけど、本当にこだわっているところはこういうお酒を造るんだよ。
僕はワインだけじゃなく、焼酎や日本酒でも、こういうちゃんと美味しいお酒をつくる酒蔵さんも大事にしたいと思ってる。
さて、口の中にこれまで体験したことのない、爽やかな香りが広がったところで、締めの言葉を頂きたいです。
原さん
僕は、自分で飲んで認めたワインをたくさん扱ってはいるけど、
それで儲けを出す、というよりは、お客さんに「預かってもらう」と考えているんだよね。
だからなるべく低価格に設定しているのは、いいお酒を「シェア」している感覚なんだよ。
商売人としては間違っているかもしれないけど、お酒を売っている、というよりは、
こういうより自然に近いものを食べたり飲んだりする文化を広めたいんだよね。
だから、初めて来てもらう人にはどうしても長話なっちゃう(笑)
確かに、長かったですね。
でも、濃厚なお話を聞けました。
ここのお客さんは「お店」に来ている、
という感覚よりも
「知り合いのワインおじさんの家」に来ている、
と言った方がいいかもしれません。
そしてそれこそが、この店を「他人に知ってほしくない」所以。
こだわりは抜群です。
お酒はいいものばかりです。
だから、
ワインおじさんと本気で付き合っていける人にだけ、行ってほしい(敬意を表して)。
ものすごく、丁寧にいろいろ教えてくれます。
ちなみに、スペースの都合で私が購入したワインは紹介しきれませんでしたが、
「ぶどうを飲んでるみたいなワイン」でした。すごい爽やか。
気になる方はアイツが買っていったワインはどれですか?と聞いてみて下さい。
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一力商店
住所:横浜市保土ヶ谷区境木本町1-26
定休日:火曜日
電話/FAX:045-714-3262
e-mail:ichiriki_wine@ybb.ne.jp