身近な野の花に飾らない言葉を添える詩画作家の星野富弘さんの詩画を展示する「戸塚 星野富弘 花の詩画展」(戸塚 星野富弘花の詩画展を開く会主催)が10月24日(木)、戸塚区民文化センター さくらプラザで開幕しました。
〜星野富弘さんのプロフィール〜
1946年群馬県生まれ。体育教師として赴任した中学校でクラブ活動の指導中に頸髄損傷を負い、手足の自由を失います。深い絶望の中、「生きる希望」として入院中のベッドの上で口に筆をくわえて、詩や絵を書き始めます。悲しみを包容する温かい詩と草花を中心にした優しいタッチの絵が広く共感を呼び、81年から雑誌や新聞で作品の連載がスタート。82年に「花の詩画展」が初開催され、以後、全国各地で展示会が企画されてきました。現在、群馬県みどり市に「富弘美術館」も開館しています。本展示会は富弘美術館の協力のもと、星野富弘さんのやさしさと愛にあふれた四季折々の花の詩画を展示しています。
本日行われたオープニングセレモニーでは、星野富弘さんご本人も登壇され、今回の展示会についてお話をしてくださいました。
世界でひとつだけの星野富弘さんの詩碑
星野さん:「こんにちは。戸塚という街がどこにあるのか知らなかったんですが、何ヶ月か前に詩画展を戸塚でやるっていうことを聞いて、大急ぎで地図で調べました。どこかで聞いたことがあるんだけど、どこだったかはわからなかったんです。
それで、詩画展の話が進んでいき、戸塚の人たちも家まで来てくれて、だんだん思い出してきました。
30数年近く前に何処かの人が、私の詩の碑を建てたいということで手紙をいただいて、その返事をしてたんです。
結局それが戸塚だった、ということを思い出しました。
面白いところで(詩画展を)やるなぁと、ぜひ行ってみたいと思って、昨日ノコノコと群馬県から出かけてまいりました
田んぼのあぜ道に詩碑があるということを聞いていたので、戸塚というところは田んぼなんかがあるところなのかなぁと思っていたら、すごいビルばっかりで周りをキョロキョロ見回しながら驚いていました」
実は、この戸塚で星野富弘さんの詩画展示会が開かれるのには、戸塚と星野富弘さんとの間に深い関わりがあったのです。
戸塚区舞岡町に広がる緑豊かな自然公園「舞岡公園」に星野富弘さんの「詩碑」があります。
同公園の設立の背景に、市民参加の里山保全を有志の代表となってリードした1人の女性が書店で星野富弘さんの詩「まむし草の実」に出会ったことがきっかけとなり、星野富弘さんに直談判し、了承を得て小谷戸の里のすぐ近くに建立された記念詩碑。
この記念詩碑は、まるで星野富弘さんの詩画の世界をそのまま表しているかのように、野草や自然に溢れ、人々の癒やしと憩いの場となっている舞岡公園設立の一助となったのです。
手紙に返事を書くことから始まった
星野さん:ここに来られたというのも、50年近く前に、まだ病院に入院中に何かを書いてみようというところから出発しています。
最初は、怪我をしてお見舞いやたくさんの手紙をいただいていて、貰いっぱなしで何か返事を書きたいなとずっと思っていたんです。
なんとかして、書く方法はないかと考えていた時に思いついたのが、どこか動かせるところ、口に筆をくわえて書くっていうことでした。
どうやって書いていいかわからなくて、とにかく母にスケッチブックとサインペンを病院の前の文房具屋さんで買ってきてもらいました。
仰向けに寝たままでしたので、顔の上にスケッチブックを持ってもらって書こうとしたんですが、母の方はスケッチブックを持っている手がブルブル震えますし、私もサインペンを加えるのは初めてなので、サインペンの先がうまく動かなくて、よだれは垂れてくるし、あんまり一生懸命書くと、今度は歯茎から血が出てきたり、どうしてもできない。そういう日が何ヶ月も続きました。
もう(書くのは)諦めていたんですが、病院に実習にきた看護学生にベッドの上で体を横にしてもらった時に、
「横向きで書いたらなんとか書けるんじゃないですか?」と言われて、やってみたら字が書けるようになりました。
一文字書くのに何分もかかるんですが、でもなんとか、手紙をくれる人に返事が書けるようになりました。
でもまぁせいぜい3行か4行書けるくらいでスケッチブックのほとんどが余白なってしまいました。
どうしてもその余白があるのが気持ち悪くて、そこで枕元にあった花をぐちゃぐちゃっと描いたんです。
それが、今日からここで展示していただく詩画の大元のカタチになりました。
ですから私の絵は、いつも文章があって、花の絵が添えてある。
それが私の絵になりまして、それをずっと長い間続けてまいりました。
それがいつしか、出版社の方のおかげで本にしていただいたり、展覧会をしていただくようになりました。
本当にわずかなことだったのですが、やってみよう、やってみようという気持ちから、
最初は本当にお粗末なものだったのですが、なんとか皆さんにお見せできるようなものができました。
今日色々展示してある作品、作品なんて言えるほどのものではないかもしれませんが、
絵も勉強したこともないし、そんなようなど素人が描いた絵だと思って観ていただけたらと思っています。
でも、それによって私は本当に生き方が変わりました。
もし絵を描いたり、書を書いたりしていなかったら、相変わらずベッドの上でテレビを観て過ごす時間が多かった、そんな日をずっと続けていたんじゃないかと思っています。
一つのものを時間をかけて書き上げると本当にもう大きな仕事をしたような、なんといいますかね、大仕事をやり遂げたような満足感があり、その日はたくさん食べられるし、よく眠れます。
本当に私は、書いた作品のおかげで元気に今までやってこられたような気がします。
今日見ていただくものは本当に大したモノではないんですが、どうぞよろしくお願いします」
展示会初日、関係者や一般の方など多くの方が会場に訪れた。
多彩な作品に見入る来場者
心をこめて一筆一筆描かれた作品は、完成までに長い時間がかかります。
そして、そこに込められた思いは、見る人の心を捕らえて離さない感動があります。
どこか優しく、生きることの辛さも尊さも全て受けて止めてくれるようで、心に深く響いてくるのです。
また、会場では、やわらかい樹脂粘土を使った本物のように美しい「野の花・野草アート」の作品も展示してあります。
この街と星野富弘さんとの関わりにふれつつ、詩画ならではの言葉が心に響く展示会、ぜひ足を運んでみてください。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
戸塚 星野富弘 花の詩画展
【開催時間】10/24(木)~11/3(日)10:00~18:00 ※ご入場は閉場30分前まで
【詩画展会場】 戸塚区民文化センター さくらプラザ3Fギャラリー A・B
戸塚区戸塚町16番地17 戸塚区総合庁舎内
JR戸塚駅、地上3階改札西口よりすぐ
【入場料】当日500円、中学生以下・障がい者手帳をお持ちの方と同伴者1名様無料
【詩画展・イベントについてのお問い合わせ】080-1220-1465(戸塚 星野富弘花の詩画展を開く会事務局)
http://totsuka.shigaten.com/
【期間中開催イベント】
●10/24(木) オープニングセレモニー ※先着70名様まで入場可能
●10/26(土) 【クラシックコンサート】 音楽と朗読で綴る星野富弘の世界 西由起子ほか
●10/31(木) 富弘さんの詩画を歌うライブコンサート MIGIWA/神山みさ/竹下静
●11/1(金) フルートとトークで綴る星野富弘の世界 紫園香
いのちの詩 wind of love 愛の風に Chako ほか