戸塚新聞は横浜戸塚の粋な情報を発信するWEBマガジンです。

想いをつなぐ、地域で支える子育てプロジェクト

子供の誕生を祝福する文化を
戸塚区から全国へ

 
フィンランドでは、赤ちゃんに必要な育児グッズが入ったボックスが、国から無償で贈られるという話を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、

戸塚区では、生まれてきた赤ちゃんと家族を祝福する気持ちを込めて、
地域と企業の方々から「ウェルカムベビーボックス」をお贈りするという素敵なプロジェクトがあります。

それが、昨年4月に始まった

「ウェルカムベビープロジェクト」。

今回はウェルカムベビープロジェクト事務局の細井綾さん(NPO法人こまちぷらす)と、「とつか背守り会」の田中朋華さん(と可愛い娘さん)にプロジェクトのお話や、地域での子育てについて詳しく伺ってきました。

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訪れたのは、お子様連れでランチが楽しめる「こまちカフェ」。
この日は、生憎のお天気だったのですが、まるでここだけは太陽の光が届いてるかのように明るくてあたたかい、和やかな雰囲気のお店です。

こちらもこまちぷらすさんが運営されているんですが、カフェでイベントを行ったり、子育てをしやすい社会をつくるために様々な取り組みをされています。

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ウェルカムベビープロジェクトとは

 
細井さん:「ウェルカムベビープロジェクトは、戸塚区でご出産をされた方に向けて、無償で『ウェルカムベビーボックス』というプレゼントをお贈りする日本初(※1)の民間で行われているプロジェクトです。このプロジェクトは、NPO法人こまちぷらすとヤマト運輸株式会社神奈川主管支店が、協働して運営を行っています。

2016年度のウェルカムベビーボックスには、母子手帳ケースや赤ちゃんも使えるスキンケアアイテム、子連れで行けるイベントの無料招待券や、お店のクーポン券など、戸塚区の12の企業や団体からのプレゼントが入っています。

そして、もうひとつが、田中さんが関わっているとつか背守り会で贈る「背守り(せまもり)」です。」

背守り

子どもの成長を願ってつくられる
「背守り」

 
昭和初期までは庶民の間で広まっていたと言われる「背守り」。田中さんに背守りについて、お話ししていただきました。

田中さん:「背守りは、子どもの成長を願って、昔の人達が産着の背に一針一針縫いつけた『お守り』のことなんです。

昔は、災いは背中から入り込んでくると言われていて、着物は背縫いによって身を守ると信じられていました。ただ、大人の着物には背中に縫い目があるのですが、子どもの着物は小さいので、その縫い目がないんです。

だから、子どもを守るために背守りを着物の背中に縫い、「目」をつけて魔除けにした、というのが背守りの云われなのだそうです。

私もこの活動をするまでは知らなかったんですが、着物の着付けをしてる母親に聞いてみたら、知ってるって言っていて、着物を着たりする人にとっては馴染みのあるものだったのかもしれないですね」

とつか背守り会での様子_1

地域のみんなで背守りづくり

 
田中さんは、お子さんが生まれてから、東戸塚の『戸塚区地域子育て支援拠点 とっとの芽』など、育児支援をしてくれる場所へ行くようになり、その時に沢山の方に声をかけていただいたり、助けていただいたことで、何か恩返しがしたいという気持ちがあったのだそう。

田中さん:「子育てサークルの活動に参加していくうちに、こまちぷらすさんが『こまちパートナー(※2)』を募集しているのを知って、ちょうどウェルカムベビープロジェクトの立ち上げのタイミングで、それで参加することにしたんです。」

ご自身が感じた先輩ママ達からの優しさを、別の誰かにも恩返ししたい、そんな想いがあった田中さんが、取り組んだのが「とつか背守り会」。

街に住まわれているおばあちゃんやおばちゃん、さらには子どもまで、地域のいろんな方々からの協力を得ながら活動をしていて、賛同してくださる方がこんなに地域に沢山いるんだと驚いたそう。

細井さん:「この背守りを縫い付けるためのさらしの台も一つひとつみなさん手作りでつくってくれていて、ある方は家で何十個もつくってくださって、家でもできるのが良いですと言ってくれるんです。そして、とにかく上手!

みなさん『自分にできることがあれば』っていう気持ちで、それぞれの立場で出来ることを考えて活動に協力してくださっていて、地域の方々の温かみを本当に感じます。」

ウェルカムベビーボックスの中身は、基本的には企業や団体からのプレゼントですが、「背守り」は地域の皆さんが一つひとつ手縫いした物で、それぞれ作った方のメッセージも同封されています。

とつか背守り会での様子_2

初心者にも縫いやすいよう
生地はさらしを採用

 
昔は着物に直接背守りを縫い付けていたそうですが、プレゼントとして渡せるようにと、丸いワッペンの形を採用。ワッペンの生地は、初心者でも縫いやすく、温かみを感じる「さらし」を使用することに。

田中さんはさらしを使ったおんぶ講座をされたこともあるそうで、さらしの魅力についても少しお話をしていただきました。

田中さん:「私も普段さらしを使っているのですが、さらしを使ったおんぶはママだけではなく、子どもにも良い影響があるのを感じます。

親と同じ目線でいろんな物事を見ているので、自然と言葉を覚えたりしていますし、気づいたらサランラップを使えるようになったりして、いつの間に覚えたのー?って、ちょっと驚くこともあります(笑)

他にも災害時など、いざという時にも役立ちますし、使い道が沢山あって最後の最後まで使用できるのがオススメです。戸塚の山形屋洋品店さんで売っているものを買ってきて、好きな色に染めたりして使っています」

全て人の手で一つ一つ丁寧につくられる背守り

お互いに支えあいながら
続けてきた背守り会

 
活動する中で大変だったことを尋ねたところ、縫いつけるデザインには、とても時間をかけて考えられたそうです。

田中さん:「ウェルカムベビーボックスは男の子にも女の子にも渡るものなので、どちらに届いても喜んでもらえるデザインを考えて、最終的に5種類になりました。

あとは、糸の色を変えるだけで作った人のその人らしさが出せるように、難しすぎず汎用性のあるデザインになっています。

その他にも、作り方を分かりやすく伝えるための『作り方見本』を作ったり、どうすれば分かりやすく作れるかを工夫しながら活動しています。

あと、これは個人的なことなのですが(笑)ちょうど娘がイヤイヤ期に入ってしまって、準備がバタついて背守り会に時間通り間に合わなかったりなんてこともあるのですが、参加される皆さんもそういう事情を理解してくださって、本当に感謝しています」

子育て真っ只中の田中さんを、周りの方も理解してサポートしているという「支え合い」の関係も、活動全体を通して大切なことなのかもしれません。

背守りはつくっていく段階で、消えるペンで縫う場所の目印をさらしに描き、それを一度田中さんが全て洗って、ラッピングして渡すそうですが、こういった細やかな気遣いは女性ならでは。

一つ縫い上げるのにも田中さんのアイディアや心配りが十分に活かされていて、そこにはたくさんの地域の方の手が加わっています。

きっとみなさんは、受け取られるご家族の顔や、生まれてくる赤ちゃんのことを考えながら作っているのだろうと、田中さんの言葉からも感じられます。
 

背守りを縫った人達からの
手書きのメッセージ

 
取材していて、印象に残ったのは、背守りにはつくった人達の手書きのメッセージが入っているということ。

「ご出産おめでとうございます!」

「子育て応援しています!」

「子供の笑顔とママの笑顔はみんなの宝です!」

 
出産していきなり始まる育児で、戸惑ったり、疲れたりしたお母さんが、手書きの応援メッセージつきの背守りを見たら、きっと喜ぶだろうと、6か月になる息子がいる私にも想像できます。

例えば背守りを受け取った方が子供のカバンに縫い付けたの物を、つくった方が街で見かけたら「私もその背守りを作ったのよ」なんていう会話にもなるかもしれませんし、その瞬間はお互いきっと優しい気持ちになれるはずなんです。

実際に背守りをもらったというお母さんで、背守り会に参加された方もいるそうで、「この背守りが本当に嬉しかったの」と言って、また違う別の方のために背守りを縫って、想いを次へとつなごうとしています。

「何かしたい」という想いで繋がっていく、その積み重ねが子育てをしやすい地域、社会をつくっていくのだと思います。
 

幅広い世代の方が出産や子育てについて
考えるきっかけに

 
最後に今後のとつか背守り会の目標について田中さんに伺いました。

田中さん:「育児していない世代の方にもこの活動を知って欲しいですし、参加していただきたいと思っています。

例えば、男性でまだ結婚されていない方や学生さんとか、そういう方に背守りを縫ってもらって、出産や子育てについてイメージしてもらえたら良いなと思います。

そうすれば、街中で赤ちゃんが泣いていても寛容でいられるかもしれないですし、だから幅広い人たちに参加して欲しいなと思います」
 

子育てをする環境がより豊かになるには

 
2014年に横浜市内でとった1562件のアンケート結果によると、今横浜の子育てを豊かにするために、当事者が最も必要と考えているのは「子育てに対する社会のあたたかいまなざし」という点でした。

多くの人が、保育所を作るのではなく、育てやすい地域作りを求めています。

戸塚では年間約2400人の子供が生まれていますが、この活動を知らない人もたくさんいます。

2016年度に生まれた赤ちゃんに届いたこのウェルカムベビーボックスが現在で160人程。2400人から応募があっても良いように準備してはいるそうですが、渡っていない人がまだまだ沢山いる現状です。

お母さんは、子どもが生まれたらすぐに育児が始まり、誰かから褒められたり、評価される訳でもありませんし、毎日子どもと一緒で、大人と話す機会も少なく、社会から孤立してしまいがちです。

世のお母さんは、想像以上に身も心も疲れています。

しかし、そんなお母さんを支えたいと思っている地域の人が実は沢山いるんです。

少なくとも戸塚区では、生まれてくる赤ちゃんと家族を祝福してくれる人たちがいます。

そんな活動を目の当たりにして、私自身も街の誰かのために何ができるだろうかと考え、まずは、もっと多くの方にこの活動を知っていただくことが大事なのだと感じました。

戸塚区がより子育てをしやすい地域になるように、地域のメディアとしてもこの活動に力添えをしていきたいと思います。

田中朋華さんと優菜ちゃん
田中さんと取材中おとなしくお母さんを待っていてくれた優菜ちゃん♪

4月より2017年度ウェルカムベビーボックスのお申込みも始まります。

 

〈お申込みの方法〉

2017年度ウェルカムベビーボックスのお申し込み「ID/PW案内」の入手先は、
3月下旬以降、ウェルカムベビープロジェクトのホームページをご確認ください。

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◆ウェルカムベビープロジェクト
http://welcomebabyjapan.jp/

また、詳しくは各HPもご覧ください。

◆とつか背守り会HP
https://totsukasemamorikai.jimdo.com/

◆今後の開催予定
https://totsukasemamorikai.jimdo.com/参加を希望される方/開催日/

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※1住民と企業、NPOの民間主導かつ、行政の連携にて実施が初
※2こまちパートナー こまちぷらすの活動をお手伝いをする方

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